『おもしろ法人留学制度』ですごす1週間 ~二日目、ブレインストーミングに参加してみた~

5月26日 22:00
 筆者は今、原稿をカヤック本社の二階、窓側に近いテーブル席の角に座り書いている。
二日目、ブレインストーミングと社内の会話を通じて、見えてきたことを報告したい。

 カヤックの中ではブレインストーミングが一日に何回も行われる。場所は二階の小高い中央テーブルが多い。筆者も誘っていただいき、アイデアを一緒に出させてもらった。その中で観察できたカヤックのブレインストーミングを振り返る。

 ブレインストーミングってそもそも、何をすること?については、各社様々なのが実情だ。まったくの制約なしの空想雑談からきらりと光るアイデアを待つスタイルもあるし、かなり実現度の高いものだけを出させるスタイルもある。それについて、筆者は「ブレインストーミングという技法の根底にあるものをふまえた上で、自組織に適したやり方へ発展的に改変して、活用する」のが良いと考えている。

カヤックのブレインストーミングについて、しかし一定の観察項目を持ちたいと思い、IDEOのブレインストーミングのルールを基本視座にすることにした。理由は、創造する企業として高く評価されているIDEOのスタイルは、イノベーティブなブレインストーミングの発展的モデルと考えられており、対応業種の広いIDEOのスタイルは広範な業種においても、対応すると思われるからだ。

IDEOのブレインストーミング、7つのルール(出典:IDEO本社会議室の掲示)

1.Defer Judgement (判断を遅延しよう)
2.Encourage Wild Ideas (突飛なアイデアを奨励しよう)
3.Build on the Ideas of Others (他の人のアイデアの上に、アイデアを創ろう)
4.Stay Focused on Topic (テーマにフォーカスを当て続けよ)
5.One Conversation at a Time (一度に一つの会話(≒かぶってしゃべらない))
6.Be Visual (ビジュアルにしよう)
7.Go for Quantity (量を求めよう)

1,2,3,7(基本のルール)に加えて4,5,6(発展系のルール)がある。

カヤックのブレインストーミングを、この観点から振り返ってみる。

まず「Defer Judgement」これは、非常になされている。「それ、できないよ」「えー(否定的なあいのて)」というフレーズは一切みられなかった。面白法人ラボBM11のリーダの一人、玉田さん(http://www.kayac.com/member/tamada)に、昼食を食べながら伺ったところ、既存にあるものが出た場合はそれをコメントするようにしているが、それ以外には、出たアイデアをダメということはない、とのこと。

次に「Encourage Wild Ideas」もなされている。ある人からは、一般の企業では発言しにくいようなコンセプトを、次々発言し、場もそれを楽しんでいる。楽しんでいるだけでなくアイデアのネタとして受け止めていた。

「Build on the Ideas of Others」については、なくはないが、発言中に占める頻度としては(観察の間には)少ないように見られた。オリジナルのアイデアが沸く力が強いため、割合的にそうなるのかもしれない。

「Stay Focused on Topic」については、非常に優れていた。一般に、ブレストの難しさの一つに「突飛なアイデアは、それを重ねるうちにが、テーマを離れた脱線に変わってしま。そうなる前に進行役は軌道修正すること」がある。そのため、リーダには優れたバランス感覚が求められる。カヤックの場合、テーマ持ち込み者がだれであれ、非常に短い時間で多様なアイデアを引き出す。それは、テーマを離れた脱線が生じる時に、「適切な振り返り」と「テーマのリファイン」を的確におこなっていることが他の企業と大きく違う能力と感じられた。アイデアに対する深いセンシティビティーがないと、否定せずにブレストの流れを変えるのは難しい。

「One Conversation at a Time」については、なされていた。人が話しているのに、割りこんで話すような会話スタイルはここにはない。発言できる機会をまつ紳士的なものが会話の根底にある。これはブレストの場以外にもカヤック全体に感じられることだ。

「Be Visual」は、筆者の見た中では、なされていなかった。IDEOのように物体を扱う業種とカヤックのような2次元上のデザインがメインの違いかもしれない。アイデアをリスト化するのは司会者がノートPCで打ち込むスタイルをメインにしているため、発言したアイデアが参加者に視覚的にフィードバックされることはない。しかし、十分に短時間で発案がなされる組織力があるため、それは効率面から行ってホワイトボードに書いて、後で書記が書きとめる、といった手順の必要性を感じなかった。そこから、創造するスピードは、会議するスタイルのあり方と大きく関係があると感じた。(補足:ただし、デザイン系のアイデアでは書きながら行うスタイルをとっている、と玉田さんに後に伺った。)

「Go for Quantity」については、十分になされている。最初に参加したブレストは、30分強で、50~60個のアイデアが出て、進行役の方に伺ったところ、そこの中にはいいアイデアが20個位、統合していくと、3つ位になるだろう、とのこと。同社の著書によく見られる、「量が質を生む」という考え方は、名義上だけではなく、体感的にしみこみ、実践されている。

上記に加えて、特筆したい事が一つある。カヤックスタイルであるブレインストーミングでは「アイデアの出が低調な時でも、出続ける」ということだ。普通、アイデアを話し合う会議は、盛りあがって沢山でることもあるが、低調なときには発言がまばらになってしまうものだ。しかし、カヤックでは、出しにくいな、というテーマで始まっても、アイデアがなめらかに出続ける。筆者は、その会議に「美しい滑らかさ」を感じた。

これを可能にしているのは、実はブレインストーミングのやり方だけに、ポイントがあるわけではない、と感じた。創造的な要素をこわさないで受け渡しができる相互関係があるのだ。社内の会話も含めて筆者が感じた事を、説明を加えて表現すると次のようになる。

無いものをつくろうとするような「創造的な仕事」というのは、要件定義しにくいことが多い。新規性が高いほど、コンセプトは、どこかエッジのたった、しかし、他のほとんどの部分がぼんやりとした輪郭をもった姿になる。それをそのままとらえて、アイデアを出し合い、構想にしていこうとするならば、組織全体に、創造的な要素をこわさないような知性が必要になる。
多くの企業では、組織成長とともに効率重視になり、要件定義できないような仕事は、扱いにくくなる。その中で、創造的リーダは創造的な仕事をやり抜くには、各部門に何度も何度も、情熱を持って、案件の持つ、微妙な「テイスト」や「光るもの」を伝え続けなければならない。つよい創造的リーダは、創造の芽がつぶされないようにすることに、相当なパワーを必要とする。
カヤックでは、組織全体が創造的な要素をそのまま受け止めて、次の段階へと受け渡していける。この相互関係があるため、多くの人の創造的な努力は一般の企業に比べると、はるかに報われ、早くて大量のアウトプットが可能となっている。

一般に、企業には、成長とともに、オペレーティブ(生産的・効率的)になろうとする力が働き、その副作用も出る。経営学で言う「オペレーティブは、イノベーティブを駆逐する」である。カヤックは、というと、成長速度も、仕事のスピードも非常に早い。ならば、どうして、イノベーティブが駆逐されてしまわないのか。明日は、その点に特にフォーカスしてみてみたい。

今日の発見:
 創造的な要素をこわさないで受け渡しができる職場

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