人、環境、覚悟、そして、創造する組織

1月 10th, 2010

 最後に、面白法人留学の4日間、カヤック社内で見つけたことを、まとめて報告したい。

「不老の空気」と「本気の覚悟」があるからこそ、創造的個人が入って来た時に、彼らの資質を引き出すことができ、組織能力として出現させることができる。大きくなっていっても、創造する組織であり続けられる。

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 すこし、詳しく表現するならばこうなる。

 創造する組織であるここカヤックでは、大きくなっていっても組織が老化(硬化)しないよう、「ありがとう。」の空気で場を満たし、一方で、組織が拡大していくなかでもベクトルがバラバラにならないように、強い覚悟で組織が導かれている。

 
 これだけでカヤックのすべてがわかったとは言えないが、一部を垣間見たものの使命として、極力言語化してみた。





筆者の考察:

 創造的な人を、創造的な組織にするには「不老の空気」と「本気の覚悟」の2大要素を持たねばならない。
「不老の空気」だけでは、創造のベクトルは束ねられない。
「本気の覚悟」だけでは力強いが創造的ではいられない。
両者があって、はじめて、創造的人材が、創造的組織になりうる。

 筆者は、当初、カヤックの中には創造的な思考を醸すアイテムがあったり、ことさらに意識されるような明確な創造活動ルールがあるのではないかと思っていたが、そういうものは発見できなかった。(もちろん、ブレストルームのような素晴らしい設備もあるのではあるが)

 上記のような「一見、カヤックらしさを引き出している要素には見えないなもの」が、創造する組織であり続けられる要因だと観察の結果、思われた。

 もちろん、これ以外にも見聞きしたことはたくさんある。また「ありがとうichオフィス」で、あり続けられるのは、リーダたちの知的耐久力によって浸透しているので、図の要素間は相互影響を持ち合っており、図ほど単純なメカニズムで片付けられるわけではない。

 しかし、それを重々承知の上でなお、このレポートを通じ「創造しつづけられる組織」を作りたいと願う経営者やエンジニアが、カヤックの横顔から何かを吸収する一助になれればと思い綴った。

 記事の最後に、御礼の言葉を付したい。
 面白法人留学制度という形で一緒に仕事をさせていただくために、各種の受け入れ手続きや日々の面倒を見て下さった方々、一緒にブレインストーミングをしましょうと、ことあるごとに機会をくださった方々、折に触れてカヤックらしさを教えていただいた皆様に、心から感謝の言葉を述べたい。

「ありがとうございました。」

関連リンク:

カヤックさんのサイトに、私の留学コメントが掲載されています。こちらからどうぞ

『おもしろ法人留学制度』ですごす1週間 ~四日目、本気の覚悟が水面下に見える~

1月 9th, 2010

5月28日 20:00
 最終日の夜、筆者は、原稿をカヤック本社の二階、中央掘りごたつテーブルに座り、この四日間を振り返っていた。今回は、今日の発見と、これまで発見したしてきたことを統合してみたい。

昨日までの【1】【2】【3】にくわえて、発見できたのは

【4】本気の覚悟があるから、「おもしろさドリブン」の組織でも、人の心にとどくものを生み出せる。

ということである。

 企業というのは創業期は創造的であることが多い。面白いことを全力でやり、エッジのきいた価値を作る「おもしろさドリブン(おもしろさ主導型)」の組織運営が見られる。
 ただ、情熱に満ちた創業初期には、それで事業を回すことが可能であっても、組織が大きくなると崩壊や怠慢につながることが多い。

 しかし、カヤックには、そうらないことを可能するに要素があった。本気の覚悟をもったリーダたちがいる。社内限定のブログには、リーダたちの言葉が全社員に共有されている。非常に猛々しいことも生々しい言葉も、あった。

  • スピードを上げること。
  • 相手の要求をこえるものを返すように考え続けて高品質な仕事めざすこと。
  • 死ぬまで一生伝え続ける覚悟があること。
  • そうしたことが読みとれた。

     カヤックは、本気の覚悟があればこそ、この面白法人という組織が事業として回りつづけられる存在であり続けられた、と思われる。

    今日の発見:
     本気の覚悟があるから、おもしろさドリブンが、人の心を打つものを宿せる。

    以上が、この4日間で見て学ぶことができたものごとである。
    最後に、この留学期間中を振り返りまとめてみたい。

    『おもしろ法人留学制度』ですごす1週間 ~三日目、「ありがとう。」richオフィス~

    1月 3rd, 2010

    5月27日 24:00
     筆者は、宿泊先のホテルの机で、今日、発見したしてきたこと書いている。

    【1】音に感じる組織の横顔

     初日に感じた「ここ、集中しやすいな」は、音と声にあった。

     よく聞いてみると、ストレスになるようなとがった音がない。声にしても、あちこちで人のしゃべる声があるが、張り詰めたような職場での会話に見られるような耳障りなトーンをほとんど含んでいない。

     働きやすいから、お互いがそういう心理状態で接しあえるように見えた。

    【2】創造的な要素をこわさないで受け渡しができること

     二日目の「ブレインストーミングのやり方だけにポイントがあるわけではない、と感じた」は、「創造的な要素をこわさないで受け渡しができる素敵な相互関係」にあった。

     カヤックでは、組織全体が創造的な要素をそのまま受け止めて、次の段階へと受け渡していける。

    この【1】【2】を成り立たせている背景には以下に述べる「ありがとう。」が豊富にある職場(ありがとうrichオフィス)があると思われた。

    【3】「ありがとうrichオフィス」

     三日目には、加藤昌治さんによるワークショップが開かれた。講師でいらした加藤さんは、カヤックの印象として「しっかりと挨拶(お礼)ができる」ことを述べられた。確かにワークショップの終わりには、気持ちの良い御礼と拍手が、自然となされていた。

     同社に留学してほどなく、オフィスの中での会話や社内のメールの頻出単語は「ありがとう。」であることに気づいた。そして、今日までの観察を振り返り、思い至ったのは、大きくなっても、創造する組織であるための、最大のヒントが「ありがとう。」にあるのかもしれない、ということ。

    (1)創造的な努力をする人々は、頻繁に”初期的なアイデア”や”未確定なこと”を口にする必要がある。

    (2)社内で様々な提案、それも初期的なアイデアを含むようなものが、十分に出されるようになるには、相手との肯定的な関係がいる。

    (学術的には、「ブレインストーミングの4つの阻害要因」という概念の中の「評価懸念」という要因で説明されている。アイデア出しの際に、他の人が「おかしな意見をいうやつだなぁ」と感じているかもしれないと、発言者側が懸念すると、アイデアは出にくくなる)。

    (3)彼らは、何かにつけて、言葉で、メールで、ありがとう、を送る。確定的ではない情報の提供や、直接の解決につながらない情報の提供まで含めて、「教えてくれて、ありがとう」、なのだ。

     そこには、ある空気がうまれる。実際には役に立たないかもしれないアイデアを出した時に、相手が必ず、肯定的に受け止めてくれるという空気が組織全体に満ちる。

     ありがとうは、アイデアを窒息させないための、空気のようなものなのだ。

    (逆に、もし相手が「もっとしっかり要件定義してから、相談してよ」いう反応をしめしたら、創造的な案件は、ストレスフルな作業になりさがるだろう。日本の多くの職場では、この構図が頻繁に生じる。)

    ・・・

     初日にしめされる「面白法人カヤック ルールブック」「カヤック取扱い説明書」は、ありがとうの文化であることを明言していた。トイレには中期計画とおもわれるシートが4枚貼ってあり、各シートに、中期目標+「ありがとう。」が書かれている。何かの仕事を誰かに依頼した時も、してもらったら、かならず、「ありがとう。」という。

     「”ありがとう。”この言葉を、重視しています。」ということを文字で読んだ限りでは、予定調和的な「言わされている白々しさ」を想起してしまうが、カヤックは違う。

     行動を強制するのではなく、文化を明示する。その結果、相手を認め、相手のしてくれたことにまめに賞賛を与える。行動上に見える事として、会話が基本「ありがとう。」になっていく。

     この「ありがとう。」という空気がオフィスの中に満ちているので、大きくなっても硬化しないでいられるように思われた。

     成長する組織が大企業病にならないように組織に魔法をかけつづける効果があるこの組織風土を「ありがとうrich オフィス」と名付けたい。

     以上、三日目までに見たことと、そこから感じたことを、報告した。

     しかし、これだけだろうか。

    「ありがとう。」をたくさん根付かせるだけで、創造する組織がつくれるだろうか。たぶん他にも非常にたくさんの要素があるはずだ。筆者に残された時間はすくない。もう少しだけ、なにか得られないか、最終日にかけてみたい。

    今日の発見 :
     「ありがとう。」の満ちた空気は、職場を老化させない。

    補足:
    カヤックのサービスには、「ありがとう」をテーマにしたサービスもある
    「THANKS」 http://thanks.kayac.com/ WEBサービス
    「THANKS bottle」  http://thx.kayac.jp/pc/  携帯電話サービス

    『おもしろ法人留学制度』ですごす1週間(特別編) ~三日目、考具の加藤昌治さんがやってきた~

    1月 2nd, 2010

    5月29日 19:00
     筆者は今、カヤック本社三階の会議室の隅に座っている。期間中の三日目に、『考具』の加藤昌治さんの考具ワークショップを体験したことをレポートしたい。

     カヤックの本社3階の会議室で、加藤さんのワークショップは行われた。参加者総数は14名。

    「考具を使って「自分がやりたいこと」を描いてみる」というワークショップ。マンダラートを用いて、多ステップに発想していくものであった。

    発想の前に、ショートレクチャー。「既存の要素」「アイデア」「企画」の構造関係を説明。既存の要素の沢山の中から(要素の組み合わせで)アイデアは生まれてくる。沢山のアイデアの中から企画が生まれてくる。

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    既存の要素を組み合わせる方法は様々あるが、カヤックのメンバーの資質を見極めて加藤さんはこう述べた。「皆さんのレベルであれば、組み合わせの方法というか発想法をたくさんやるよりは、既存の要素をたくさん得ることに力点を置いた方がいいですね」「そのためには「直接体験」「間接体験」「いわゆる知識」があります。しかし、案件は突然降ってくるのでそれから体験を得ようとしても大変。では、どうするかといえば…「遊べ」ということですね。」とのこと。遊ぶのも芸の肥し、というのはアイデア創出系の仕事においてもやはり大事なのだ。遊びにつかった「領収書」の分だけ仕事の質が上がるかもしれないならば、企業の行う研究開発投資のようなものかもしれない。よし、明日からもっと遊ぼう。

    今回の特別ワークショップの考具は、「マンダラート」。9つのセルが、アイデアを思いつく力を促進してくれるのだ。その実際の展開方法を行っていただいた。今回は、「もし転職するならば」という仮定で自分のやりたいことを掘り下げて具体的に浮かび上がらせるというもの。加藤さんは、面白法人という場に合わせてテーマを選定したと思われる。企業内のワークショップなのに「転職をするなら」という前提で発想テーマを組む遊び心。

    1 現状認識:
    自分の「やりたい職業/会社」をマンダラで開く
    (中央に職業。周囲にそこから連想される言葉を書く)
     ↓
    2 視点をズラす:
    お隣さんの「やりたい職業/会社」をマンダラで開く
      ↓
    3 いったんカイシャを忘れて:
    「やりたい行動/成果」をマンダラに書く
    (1+2をみて、自分がやりたい行動、成果をマンダラに
    ありったけ書き出す。2枚を超えてもOK)
      ↓
    4 いったんカイシャを忘れて:
    一つを選んで、さらに分解された「行動」「成果」は?
    (3でピンときたセルを得て、それを中心に据えて、具体化、言い換え。
    ありったけ書き出す。2枚を超えてもOK)
      ↓
    5 ここらで戻る:
    「行動」「成果」から「職業を逆算する」
    (4で深めた「価値」を得選び、それを中央に据えて、職業を逆算
    ありったけ書き出す。2枚を超えてもOK)
      ↓
    6 ここらで戻る:
    お隣さんの「職業を逆算する」
      ↓
    7 後でもう一度考えてみる。宿題です:
    もう一度見直しを。見落としが発見できたら、十分価値があるのでは?

    体感的には各ステップが10分前後。ステップを進むごとに、加藤さんのミニ講義が入るスタイル。カヤックのメンバーは、さすがに、すぐに書き出すことができ「何も思い浮かばない」という人は皆無。

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    気づきの書き出し・共有と、質疑応答を含めて2.5時間。気づきの書き出し・共有からは、「自分の気が付づいていないことがワークを通じて発想でき気が付けた」というコメントや、「具体化と抽象化を通じて発想が広がることに可能性を感じた」というコメントがあった。筆者は、自分自身が考えていなかったことを、他の方が自分に書いてくれたマンダラートから見出し、普段は無意識に無視している選択肢があることを認識して興味深かった。

     なお、のちほど加藤さんに、参加者ついて、発想力以外の点で何か感想はありますか、と伺ったところ「挨拶ができて、礼儀正しいですね」とのお答えだった。実は筆者も留学していて同じ感想を持った。発想力に長けたクリエータというと、“対人関係は重視しない”人物像を想起してしまう人も多いと思うが、カヤックのメンバーは決してそうではない。

    この挨拶や御礼を、自然に行うような精神面も、「創造する組織の素地」を醸成しているのではないだろうか。

    「ありがとう。」が豊富にあることに注目して、三日目の気づきを振り返りたい。 

    今日の発見:
     創造する職場は、挨拶やお礼がしっかり、かも

    (おもしろ法人留学制度~三日目~(通常版)、は明日掲載します)

    『おもしろ法人留学制度』ですごす1週間 ~二日目、ブレインストーミングに参加してみた~

    1月 1st, 2010

    5月26日 22:00
     筆者は今、原稿をカヤック本社の二階、窓側に近いテーブル席の角に座り書いている。
    二日目、ブレインストーミングと社内の会話を通じて、見えてきたことを報告したい。

     カヤックの中ではブレインストーミングが一日に何回も行われる。場所は二階の小高い中央テーブルが多い。筆者も誘っていただいき、アイデアを一緒に出させてもらった。その中で観察できたカヤックのブレインストーミングを振り返る。

     ブレインストーミングってそもそも、何をすること?については、各社様々なのが実情だ。まったくの制約なしの空想雑談からきらりと光るアイデアを待つスタイルもあるし、かなり実現度の高いものだけを出させるスタイルもある。それについて、筆者は「ブレインストーミングという技法の根底にあるものをふまえた上で、自組織に適したやり方へ発展的に改変して、活用する」のが良いと考えている。

    カヤックのブレインストーミングについて、しかし一定の観察項目を持ちたいと思い、IDEOのブレインストーミングのルールを基本視座にすることにした。理由は、創造する企業として高く評価されているIDEOのスタイルは、イノベーティブなブレインストーミングの発展的モデルと考えられており、対応業種の広いIDEOのスタイルは広範な業種においても、対応すると思われるからだ。

    IDEOのブレインストーミング、7つのルール(出典:IDEO本社会議室の掲示)

    1.Defer Judgement (判断を遅延しよう)
    2.Encourage Wild Ideas (突飛なアイデアを奨励しよう)
    3.Build on the Ideas of Others (他の人のアイデアの上に、アイデアを創ろう)
    4.Stay Focused on Topic (テーマにフォーカスを当て続けよ)
    5.One Conversation at a Time (一度に一つの会話(≒かぶってしゃべらない))
    6.Be Visual (ビジュアルにしよう)
    7.Go for Quantity (量を求めよう)

    1,2,3,7(基本のルール)に加えて4,5,6(発展系のルール)がある。

    カヤックのブレインストーミングを、この観点から振り返ってみる。

    まず「Defer Judgement」これは、非常になされている。「それ、できないよ」「えー(否定的なあいのて)」というフレーズは一切みられなかった。面白法人ラボBM11のリーダの一人、玉田さん(http://www.kayac.com/member/tamada)に、昼食を食べながら伺ったところ、既存にあるものが出た場合はそれをコメントするようにしているが、それ以外には、出たアイデアをダメということはない、とのこと。

    次に「Encourage Wild Ideas」もなされている。ある人からは、一般の企業では発言しにくいようなコンセプトを、次々発言し、場もそれを楽しんでいる。楽しんでいるだけでなくアイデアのネタとして受け止めていた。

    「Build on the Ideas of Others」については、なくはないが、発言中に占める頻度としては(観察の間には)少ないように見られた。オリジナルのアイデアが沸く力が強いため、割合的にそうなるのかもしれない。

    「Stay Focused on Topic」については、非常に優れていた。一般に、ブレストの難しさの一つに「突飛なアイデアは、それを重ねるうちにが、テーマを離れた脱線に変わってしま。そうなる前に進行役は軌道修正すること」がある。そのため、リーダには優れたバランス感覚が求められる。カヤックの場合、テーマ持ち込み者がだれであれ、非常に短い時間で多様なアイデアを引き出す。それは、テーマを離れた脱線が生じる時に、「適切な振り返り」と「テーマのリファイン」を的確におこなっていることが他の企業と大きく違う能力と感じられた。アイデアに対する深いセンシティビティーがないと、否定せずにブレストの流れを変えるのは難しい。

    「One Conversation at a Time」については、なされていた。人が話しているのに、割りこんで話すような会話スタイルはここにはない。発言できる機会をまつ紳士的なものが会話の根底にある。これはブレストの場以外にもカヤック全体に感じられることだ。

    「Be Visual」は、筆者の見た中では、なされていなかった。IDEOのように物体を扱う業種とカヤックのような2次元上のデザインがメインの違いかもしれない。アイデアをリスト化するのは司会者がノートPCで打ち込むスタイルをメインにしているため、発言したアイデアが参加者に視覚的にフィードバックされることはない。しかし、十分に短時間で発案がなされる組織力があるため、それは効率面から行ってホワイトボードに書いて、後で書記が書きとめる、といった手順の必要性を感じなかった。そこから、創造するスピードは、会議するスタイルのあり方と大きく関係があると感じた。(補足:ただし、デザイン系のアイデアでは書きながら行うスタイルをとっている、と玉田さんに後に伺った。)

    「Go for Quantity」については、十分になされている。最初に参加したブレストは、30分強で、50~60個のアイデアが出て、進行役の方に伺ったところ、そこの中にはいいアイデアが20個位、統合していくと、3つ位になるだろう、とのこと。同社の著書によく見られる、「量が質を生む」という考え方は、名義上だけではなく、体感的にしみこみ、実践されている。

    上記に加えて、特筆したい事が一つある。カヤックスタイルであるブレインストーミングでは「アイデアの出が低調な時でも、出続ける」ということだ。普通、アイデアを話し合う会議は、盛りあがって沢山でることもあるが、低調なときには発言がまばらになってしまうものだ。しかし、カヤックでは、出しにくいな、というテーマで始まっても、アイデアがなめらかに出続ける。筆者は、その会議に「美しい滑らかさ」を感じた。

    これを可能にしているのは、実はブレインストーミングのやり方だけに、ポイントがあるわけではない、と感じた。創造的な要素をこわさないで受け渡しができる相互関係があるのだ。社内の会話も含めて筆者が感じた事を、説明を加えて表現すると次のようになる。

    無いものをつくろうとするような「創造的な仕事」というのは、要件定義しにくいことが多い。新規性が高いほど、コンセプトは、どこかエッジのたった、しかし、他のほとんどの部分がぼんやりとした輪郭をもった姿になる。それをそのままとらえて、アイデアを出し合い、構想にしていこうとするならば、組織全体に、創造的な要素をこわさないような知性が必要になる。
    多くの企業では、組織成長とともに効率重視になり、要件定義できないような仕事は、扱いにくくなる。その中で、創造的リーダは創造的な仕事をやり抜くには、各部門に何度も何度も、情熱を持って、案件の持つ、微妙な「テイスト」や「光るもの」を伝え続けなければならない。つよい創造的リーダは、創造の芽がつぶされないようにすることに、相当なパワーを必要とする。
    カヤックでは、組織全体が創造的な要素をそのまま受け止めて、次の段階へと受け渡していける。この相互関係があるため、多くの人の創造的な努力は一般の企業に比べると、はるかに報われ、早くて大量のアウトプットが可能となっている。

    一般に、企業には、成長とともに、オペレーティブ(生産的・効率的)になろうとする力が働き、その副作用も出る。経営学で言う「オペレーティブは、イノベーティブを駆逐する」である。カヤックは、というと、成長速度も、仕事のスピードも非常に早い。ならば、どうして、イノベーティブが駆逐されてしまわないのか。明日は、その点に特にフォーカスしてみてみたい。

    今日の発見:
     創造的な要素をこわさないで受け渡しができる職場

    『面白法人留学制度』ですごす1週間 ~第一日目、もっとも興味深かったのは、「集中がしやすい」こと~

    12月 31st, 2009

    2009年5月。アイデア創出の支援組織「アイデアプラント」代表の石井力重が、「面白法人カヤック」に1週間、滞在しながら、カヤックの作り続ける現場を体験しました。
    同社の「おもしろ法人留学制度」とよばれる制度は、他の企業の方を社内に受け入れて一緒にカヤックの仕事をし、お互いに刺激をうけ成長を促し、社会に「つくる人を増やす」目的で展開さている面白い制度です。
    この内容を、アイデアプラント石井が体験し、社内の何気ないものにまで光を当て、創造のヒントを報告していきます。

    5月25日 16:30 
    筆者は今、原稿をカヤック本社の二階、中央のテーブルで書いている。朝9時から今(夕方4時)まで振り返ってみると「不思議と、集中しやすい」ことが最も興味深かった。

    誠Biz.IDでは、いく度か紹介されているカヤックのオフィス。すごくクリエイティブなムードが写真からも漂うが、実際の現地はやはり写真以上のデザインのよいワークプレイスだと感じる。
    筆者は、テーブル席ではなく、中央の一段高い掘りごたつ式の大テーブルでPCを広げた。落ち着いてから、まず気が付いたのは、人の視線があまり気にならないこと。壁がほとんどなく、ガラス扉で空間を仕切っているので、どちらをみても、社員の方の姿が見える。テーブル席や中央席での打ち合わせの声が聞こえてくる。しかし、しばらく作業をしていて、不思議におもったのは、「ここ、集中しやすいな」ということだった。

    なぜ、だろう。

    筆者は、その疑問への答えが、1時間たってもみつけられなかった。特徴的な装置があるわけではない。ちなみに、その答えを探して、探し歩いているうちに、すっかり不審者となっているのを、ギブ&ギ部(カヤックの管理系部署)の長橋さん(http://www.kayac.com/member/nagahashi)に教えてもらい、冷静さをとり戻す。(それ、集中していないだろう、とのお声もありますが。)

    初日にわかるのは、残念ながら、このくらいであった。1日いて、分かることがこれくらいである、というのは実は筆者には予想外であった。その時に、ふと思い出した。経営学にイノベーションの占有可能性という概念がある。技術の複雑性が高いことは、長期にわたりイノベーターが競争優位を維持できる重要な要因とされている。今回の場合、技術、というよりも、組織能力といいかえてみるべきだとすれば、組織能力の複雑性が高い組織であるからこそ、カヤックはカヤックらしくあり続けるのかもしれない。

    筆者の頭の中には、疑問符が山済みである。明日は今日の経験を踏まえて、一歩踏み込んだ要因を見出すことをひっそりと心に誓いつつ、本日のレポートを終えたい。

    今日の発見:
     静寂でもないし人も多いのに、「ここ、集中しやすいな」を感じる職場

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